パレード

旅行と動物と料理と化学らへんを不定期に更新します。

石を投げられないひと

昔話だからぼんやりした話。

とある地方大学の理学部化学科に在籍したある女の話です。

四年生になって一番興味のある研究室にすんなり入ることができてうかれていたその女はまず最初に挫折をします。

とても基本的な実験で、その女はこうあるべき結果をまったく得ることができませんでした。同じ研究室に入った同期は1回でその実験(といいつつも調整したタンパク質の定量を分光光度計を使って行う結果がわかっている操作)をクリアしていく中、その女はひどいデータをたたき出しそれに付き合う研究室の先輩を心底うんざりさせていました。何度やっても「あらかじめこうあるべきデータ」に値をすることができず、最後のころには先輩方がお手伝いをしてくださり何とかその作業を終わることができました。

その後も与えられた研究テーマに対しての実験を組み立て、実施してもろくなデータは得られませんでした。実際実験を始めるとまずはその機械を壊すかのようなトラブルが起こり、解決するのに長い時間がかかりました。周囲がどんどんうんざりするのが手に取るようにわかります。そんなこんなで機械をだましだまし行った実験はその女にとっては「この実験ではわからないことが、わかった」という現在であれば(調査兵団じゃねーよ!)って突っ込みを入れたくなるようなものでした。

しかしその結果を見て指導する方は目を輝かすのでした。真理に対し、一歩前進したのだ、この中に求めるタンパク質があるのだ、と。

 

女はそんな指導者を見てもうここにはいられないと思ったのでした。

 

その後女は実験も何もできなくなりずいぶんな長い間部屋から出ませんでした。

しかし死ぬこともありませんでした。

女は「腫れ物に触るように」して、指導してくださる方も含め、たくさんの人に配慮してもらいながらなんとか卒業しました。

 

 

女の行方はだれも知らない。いやいやいや。