パレード

旅行と動物と料理と化学らへんを不定期に更新します。

あなたがさっき飲んだワインの中にクレオパトラさんの鼻水だった水分子は何個入っているかという話

今週のお題「雨あめ降れふれ」

雨ってことで、水の話。

雨じゃなくても、鼻水じゃなくても、ワインじゃなくてもなんでもいい。水溶液なら。

(写真は最近飲んだワイン。おいしかったしか覚えていない。)

 

 

 

 

物質量、分子や原子のつぶつぶのとんでもない莫大な数「mol」なのだというのを言いたいときに使う話の一つなんだけれど、たとえば有名なクレオパトラさんのワイン。

 

恥ずかしいことに歴史に今までぜんぜん興味なくて、彼女が何をした人なのかいまいちわからないんだけれど(じゅうたんにくるまれた?)確かお酢が入った杯でカンーパーイ!ってなってクレオパトラも貧乏なものよのう落ちぶれたものよのうと思われた瞬間自分のイアリングの真珠をむしりとりその中にポチャンと入れて飲んだ飲ませたおおうこれぞ弱酸の遊離反応!ってのがあったようななかったような。

 

真珠の主成分炭酸カルシウムCaCO3、炭酸塩。

それに対して酢酸はCH3COOH、カルボン酸。酸の強さで言いますとカルボン酸のほうが炭酸よりも強い酸なので、弱い酸の塩は強い酸によって塩の座を奪われ弱いほうは再び酸に戻ってしまう反応をします。弱酸の遊離反応です。

CaCO3 + 2CH3COOH → (CH3COO)2Ca + 2H2O + CO2

 

市販の食酢の濃度で5%程度、それだとすんなりとこの反応とはいきませんのでクレオパトラさんの飲まれた酢は高濃度であった、しゅわわーと真珠が溶ける濃度であれば相当気合が入って飲まねばならない危険な飲み物であったと考えられます。ワインビネガーだとかのレベルじゃなくてともかく刺激的なものだったことでしょう。やるなあパトラ。

 

で、物質量に戻ります。物質量とは個数のことです。

単位はモルを使いまして、質量数12の炭素原子が12gあったときに中に炭素原子は

6.0×10(23)個   ※( )内は指数

ありまして、原子量ってのの基準が質量数12の炭素原子なんでこの6.0×10(23)個の集団を単位にしてしまえばたとえば二酸化炭素CO2分子量44が44gあったときもCO2が6.0×10(23)個あるっていえるよね便利!っていう。

 

 

指数を使えば簡単に書くことができるこの6.0×10(23)個っていう数はものすごくでっかい数字です。

たとえば一万円札を6.0×10(23)枚重ねたときの高さをxとすると1万円札100枚あたりの厚さが1cm程度、1cm=10(-3)×10(-2)km=10(-5)kmですので

 

100枚:10(-5)km=6.0×10(23):x

x=10(-5)×6.0×10(23)×10(-2)

 =6.0×10(16)km…①

 

ぜんぜん想像できないので1年間に光の進む速さ光年に直します。

1光年=9.4605284 × 1015 m

   ≒9.5×1012 km

ですので、この値で①を割ります。

6.0×10(16)km/(9.5×1012 km/光年)

≒6.3×10(3)光年

≒6300光年

 

…かにパルサーまでの距離みたいです。

かに星雲1054年に観測された超新星爆発の残骸。昼間でも明るく見えたそう…ペテルギウスでそうならないかなあ生きているうちにっていうやつです。

一万円札を6.0×10(23)枚積み重ねるとかにパルサーまで届く。

6.0×10(23)っていう数字はでかいなあ、かにパルサー遠いなあって思ってもらえるといい。

 

 

 もう一度水の話に戻ります。

計算上楽なので、パトラさんが飲まれたワインを180gとします。ほぼ水が主成分としてH2Oの分子量=18としますとパトラさんの飲まれたワインの中には

180g÷18g/mol=10mol

10molの水H2Oが含まれています。

H2Oの個数でいいますと

6.0×10(23)個/mol×10mol=6.0×10(24)個

 

では地球上にある水は何個なのか。

地球の水の量:水資源機構

 こちらのサイトによりますと、「私たちの地球にはおよそ14億Km3の水がある」ので水の密度を1,000.00 kg/m³として計算します。

14億Km3の水の質量は

14億Km3 

=14×10(9)×10(3)m×10(3)m×10(3)m

=1.4×10(18)m3 

となるので

1.4×10(18)m3 ×1,000.00 kg/m³

=1,4×10(21)kg

となります。さらにグラムに直すと

1,4×10(21)kg×1000g/kg

=1,4×10(21)kg×10(3)g/kg

=1.4×10(24)g

ではこれはmolに直すと何molになるか。水のモル質量は18g/molなので

1.4×10(24)g ÷18g/mol

≒.7.8×10(22)mol

 

ではクレオパトラさんのワインに水分子が10mol入っていますので地球上の水に対してパトラさんのワインの水の割合は

10mol÷(7.8×10(22)mol)

=1,3×10(-22)

です。これはわたしがさっき飲んだワインの中の水を180g、10molにかけてやりますとワイン中のクレオパトラさんワイン由来の水分子の物質量がわかります。

10mol×1,3×10(-22)

=1.3×10(-21)mol

 

1mol=6.0×10(23)個でしたので、これをさらにかけますと

1.3×10(-21)mol×6.0×10(23)個/mol

=7.8×10(2)個

 =780個

 

インターネットで調べてこの話ででてくるのだと「約10個」となっていて開きがありそうですがまあ地球上の水の個数とワインの量に差があるのでこのくらいは違いがでます。

つまりこれから飲むワイン1杯にはこないだあの子が飲んだ180mLのミルクティーに含まれていた水分子が780個入っている! 

 鼻水であったら一日1L=1kgも出しているそうなんでもっと数増えて4300個も入っている!

おしっこならば一日1.5L=1.5kgなので6500個!

世の中の水という水が均一になるならば入ってる。入っているのだ。

水分子の出自はわからない。水分子には何も印となるものは書かれてなくて書かれているならばそれは放射性物質ということになるんだけどそれはまた別の話。

 

いつか誰かをぬらした雨の水分子が目の前のコップに入っているかもしれない。

じめじめした季節はそんなことで物質量に思いをはせたりするとなかなか楽しい。よかったらぜひ。