たとえばハンバーガーを選ぶこと
たとえばハンバーガーを選ぶこと。
そういうのをイオンが持ってきてくれた。
小さいころは、ファーストフードっていう文化がほとんどなく、ハンバーガーそのものがとても高価な都会の食べ物だった。あーでも確かあったな近くの町のジャスコにドムドムバーガーと思って調べたら、どうもそんなハイカラなものじゃなくて「モンキーバーガー」っていう地元?チェーン店ではないバーガーだった。あったんですよ、ジャスコのフードコートに。その話を他の人にしたら
「あー…はやはやうどん、ってあったよね」
と言われる。まあ確かに「はやはやうどん」はファーストフードではあったが。
「モンキーバーガー」のハンバーガーの味は覚えていない。
マクドナルドのハンバーガーはとても都会の味だった。
友達と一緒においしいスパゲティーを食べようと行ったのはカプリチョーザだった。
おもしろい本屋さんがあると秋田市まで行ったのはヴィレッジヴァンガードだった。
カプリチョーザは秋田にはなくなってしまったけれど、今ではたいていのものはイオンモールに行けば手に入れることができる。
今だってフレッシュネスバーガーは県内にないし、セブンイレブンは現在こそ乱立しているし敷地はあるけれどなり手がおらず廃墟みたいになっているところまであるけれどほんと最近の話。
本屋はあきらめた。と思っていたら車と一緒に本が販売されているという変わった本屋ができた。品揃えはなかなかよい。
たぶん、たとえばハンバーガーを選ぶことを、イオンが教えてくれた。
なんでも選ぶ余地が増えた。前は何もなかった。余地を持ってきてくれたのは大資本だったとしても、こんな何もないような田舎に人もどんどん減っていって若者が生まれても出て行くだけの超高齢化社会のこの土地に、いままで誰も何もしてくれなかったじゃないか。
イオンやトヨタにしゃぶりつくされろって?
じゃあお前が何をしてくれたっていうんだ。
駅前には地元バーガーの店がある。地元産の肉を使っている。そりゃあおいしい。でも夕方6時には閉まる。びっくりする。
でもそんなのを食べたいわけじゃないんだ。
そんなのを食べたいわけじゃない。
じゃあ自分で作っちまえ!と思ってもバンズを手に入れられないし作る気力もなくてふつうのハンバーグのばんごはん。
そう、今日はこういうのを食べたかった。